いつの日か還る

中村彰彦。実業之日本社。
島田魁の話です。生い立ちから江戸での剣術修行、新選組とその後、京都で死ぬまでの長い物語でした。島田さんの実直な人柄がとても好感が持てます。永倉さんとの友情も凄くいいです。土方さんは時々出てくるのですが気を遣ういい人で、島田目線だからかもしれませんが私は優しい感じがしました。近藤さんはそれに比べて建白書のことでいつまでもネチネチ仕返ししたりして、心の狭い嫌な感じに書かれていましたね。そのフォローも土方さんがしてくれるわけですが・・・。
新選組には永倉の友人だったから巻き込まれて入ったので、好きでやったのではないと云う態度なのがなんとなく嫌でした。個人的な思い込みですが西本願寺に守衛として勤めたり、土方さんの戒名を書いた紙を死ぬ時まで腹の晒しに巻いていた人ですから、もうちょっと思い入れがあったと私は思いたいんですが。亡くなったのが明治33年なので土方さんの死から30年以上経っていたわけですからね。京都に戻って来たのは妻子がいたからだと思いますが、もし新選組が嫌々やったものだったらわざわざ西本願寺には勤めないと思うんですよ・・・。雑誌連載時にはなかったらしい維新後の最終章が付け加えられています。そのせいか大坂を出てから弁天台場降伏までの間の話がありません。ここが一番大事なんだけどな、と土方ファンの私は思うんですけどね〜。
でも文章は読み易いし、細かい格好の描写(戦の支度や、普段着ているものなども)があって分かりやすく面白く読めると思います。