輪違屋糸里 下

浅田次郎文藝春秋
下巻を読んでさらに釈然としなくなってしまいました(^^;)。浅田次郎ファンはやっぱり読まないで下さいね・・・。
やはり細かい事情の説明には一人称が登場するのですが、もうそこはそういう作家さんなんだと思って読んでいたんですけど、流石に芹沢暗殺のところは気になりました。その章だけ今まで「どこにいたの??」と云うくらい関係なかった沖田の一人称なので。しかもすでに労咳で自分の胸を食われる音を聞いているんですが、池田屋の時点でも喀血していたら慶応4年(明治元年)までもたないからこれは間違いだろうと云われているのに、さらに半年以上も早いと云うことはあり得なさそうなんですが・・・。
土方さんは上巻よりもさらにわけのわからない人に感じました。直接出て来ないで人に噂されるだけなので掴みにくいのかもしれませんが。一番分からないのは芹沢暗殺の時に糸里と吉栄を殺そうとしておきながら、そのすぐ後に田舎へ帰って百姓やるから一緒に来て欲しいと云っていることですね。糸里はこの台詞で何をどう理解したんだが、突然今までの土方の全ての言動行動が分かってしまったらしいんですが(苦笑)、私にはどう理解したんだかさっぱり謎でした。利用するならするで、用が済んだら捨てた方が非道は非道で筋が通っているような気がするんですが。そうすると土方さん救いようのない悪人ですけどね(^^;)。
糸里と土方さんが恋仲になった過程も全く出て来ないのですが、これだけ因縁があるのだったら京にいる間に全然無視なのも納得できません。要するに作り話でないと全て釈然としない話だなと私は思いました。いっそ糸里が太夫上がりする名前を桜木ではなくて花君太夫にして土方さんの馴染みだったことにすれば辻褄が合うかなあ・・・。でもそれも無理がありますね。
いいなと思ったのは、永倉さんが芹沢と近藤の間に挟まれて困っている(史実はそうだったらしいので)のと、お梅さんが健気でとても可哀想なこと。お梅さんの為人には疑問も相当あるのですが、この物語で一番感情移入できて本当に無念さが辛かったです。でもこういう気持ちだったら芹沢さんと死ねて幸せだったかもしれないかな。
あと題名に違和感を覚えるのですが、浅田さんは糸里だけではなく、新選組の周りにいる女達みんなの話を書きたかったのではないかと思いました。