土屋隆夫推理小説集成4 5 三度目ならばABC

土屋隆夫推理小説集成4。妻に捧げる犯罪、盲目の鴉。
妻に捧げる犯罪、妻に浮気されて心中された大学教授日野が、夜な夜な他人の家に間違い電話をかけて適当なイタズラ話をしかける趣味の悪いことを楽しんでいるうちに、ある日殺人事件を匂わせる人妻志麻の電話を受ける。興味を持ち調べていくうちに彼女が誰なのか突き止めるのだが、追い詰められた彼女は自殺してしまう。しかしそれが偽装であることを疑った教授が調べて行くうちに彼女の共犯者村田に辿り着く。ラストは教授が自分の子を身ごもったと言う女(妻の浮気相手の奥さん。でも日野はEDだから奥さんの勘違い)と共犯者を殺して捕まりそうになった途端道路に飛び出して死ぬんですが、結局最初の日野が電話を受けた事件が真相が明らかにならないままです。日野は志麻と村田が共謀して彼女の夫を殺害して、日野に追い詰められて動転した彼女を村田が自殺に見せかけて殺害した、と断定して志麻の復讐の為に村田を殺したんだけど、それはあくまで日野の想像なんですよね。最初の事件がそもそもあったのかすら謎。

盲目の鴉。千草検事シリーズです。劇作家の卵水戸大助が世田谷で、評論家真木英介が長野で殺される。千草検事はこの二つの事件が同一犯のものと推理するが、容疑者には鉄壁のアリバイが。これも動機は復讐で犯人は自殺なんで土屋さんのパターンだなとは思うけど、まあ面白かったかな。話に出てくる作家田中英光や詩人大手拓次は実在するんですね。読んでみたいとは思わないけど(^_^;)。


土屋隆夫推理小説集成5、不安な産声、華やかな喪服。
不安な産声は人工授精の権威久保教授の犯罪。どんでん返しが効いていて面白いけどやっぱり犯人は自殺。当時こういうのが流行っていたんですかね? 青酸カリは確かによくマンガとかドラマで見た気がするけど。千草検事シリーズラストの作品。人工授精でいつも不公平だと思うのが精子バンクは良くて卵子バンクはないことですね。遺伝子的に考えたら半分ずつなのに、人間は卵子からできていると考えるのかな〜。まあ精子に比べると卵子は簡単には採取できないし問題はあるんだろうけど。確かアメリカにはあったような気がするな。
久保教授は姉を殺された(事故だけど)復讐のために人工授精を使った犯罪を行うわけですが、昔アメリカで面倒だからと言う理由で授精に自分の精子を使ってた医者がいたな。めちゃめちゃ人数多くて(うろ覚えなんですが300人以上だったと)将来その子達が結婚したら困ると問題になってたような。でもそれより私はその医者が不細工で子供が似ていてやだな〜と思った(^-^;。

華やかな喪服。誘拐された人妻とした男の奇妙な4日間。これも動機は復讐で犯人は自殺。うーん…土屋隆夫はもういいか、と思いました。人妻由紀は美人で誘拐犯江森はイケメン、二人が自然に惹かれ合うと言われてもなー江森の行動も不自然(復讐の機会を待つ間時間をつぶしていたなら別に由紀と子供を誘拐する必要感じないんですよね)だし…なんかファンタジーぽい。ストックホルムシンドロームにしても浅い気がする話でした。しかし自殺後の江森の手紙を由紀が読むとこは泣けた(T_T)。
土屋隆夫はもう読まなくていいなと思いました。文章は凄く読みやすいんだけど。とにかくワンパターンだからなあ。千草検事は好きだけど不安な産声がラストだし。もし読むなら4が一番面白いですかね。


三度目ならばABC、岡嶋二人
中編が6つ。「三度目ならばABC」「電話だけが知っている」「三人の夫を持つ亜矢子」「七人の容疑者」「十番館の殺人」「プールの底に花一輪」
お昼の情報バラエティーのコーナーを受け持つ弱小プロ「剣プロ」の通称山本山コンビ(織田貞夫と土佐美郷だから)が探偵役。この二人は二人で名探偵だけど美郷が疑問を持つ係で貞夫が解決する係。明確にわかれてます。なかなか面白かった。