新選組藤堂平助

秋山香乃。文芸社。
その題の通り平助の話ですが「SAMURAI 裏切者」と云う本のリメイク版だそうです。秋山さんもあとがきで「あまり知名度の高い人物ではない」と書かれていますが、だからこそかなりの創作があってもいいと云う話になっているのかな?と思いました。正直に云うとここまでの人間だったのかとかなり疑問に思うくらい美化されていると思います・・・。
土方さんとの関わりもここまで濃くはないのではないかと。結果的に新選組を裏切ることになる心象も「それが原因かな〜」と今一つ納得が行くものではない(私には)です。昔は剣術において同流だと云うことが家族と同じくらい意味の重いものだった、と考えると山南さんや伊東さん、坂本竜馬と同じ「北辰一刀流」だったことが単純に決め手ではないかと思うんですが。「土方さんが一番好きだ」と云われてもなあとちょっと疑問に思ってしまいます。私が平助にあまり関心がない(嫌いではないですが)せいかもしれないですね。この話の土方さんは秋山さんの他の本に比べて男っぽい気がしますが、それは平助ビジョンだからかも(笑)。
斎藤一が「本当に平助とおない年?」と思うくらい飄々としてるのと、永倉が「トシさん」と呼ぶのと、山南さんが脱走に至る過程で描かれる土方さんとの関係がかなり好みでした。この山南さんは可哀想なんだけど結構ブラックで、ゾクっときましたね(笑)。薩摩側につく関係でこの時代の政治的な流れも詳しく書かれていて、幕末の全体像も分かり易いと思います。